2006年
08月
24日
(木)
01:32
最近になってW杯の話をしていたら、友人がさらっと「マテラッツィはバレエだったねえ」と言いました。私は我が意を得たりと大喜びです。
ほんとかなあと思われた方は、『椿姫』第3幕のパ・ド・ドゥ、『マノン』沼地(写真)のパ・ド・ドゥなどの、死にかけの主人公の踊りをぜひご覧ください。あの倒れ方が、ドラマティック・バレエのチープなパロディのような「どベタ」な表現であったことを、納得していただけると思います。

(足の甲にご注目ください。すごい屈曲!また単純に垂直方向だけを意識した身体ではなく、とめどなく刻々とあちこちに流れる人間の意識さながら、いろんな方向に力が分散されているのがわかります。
プティの作品を踊るフェリがポアントで立った時は、柔らかくて強い甲にたくさんの表情がありました。土着(特定少数)の人間関係の中で生じる、ちょっとした劇性とか会話のリズムとかを感じさせるような、独特のニュアンスを持った脚でした。
そしてこのマクミラン『マノン』。フェリはポーズというか脚だけでもう、いわゆる古典とは質の異なる身体が/身体と音楽との関係が、この作品にはあるんだろうなと想像させてしまうダンサーだと思います。画像:世界バレエフェスティバル パンフレットより)
早々にイタリアチームの優勝を予想した、身近にいる生粋の勝ち負け好き(テニスをしていたら、ラミレスに突然「ナイスプレイ」と褒められたらしい)の気迫のこもった観戦は例外として、私の周りで人気が集中したのはアルゼンチンの放送でした。皆の目的は一つ、客席のマラドーナを観るためです。
ほんとかなあと思われた方は、『椿姫』第3幕のパ・ド・ドゥ、『マノン』沼地(写真)のパ・ド・ドゥなどの、死にかけの主人公の踊りをぜひご覧ください。あの倒れ方が、ドラマティック・バレエのチープなパロディのような「どベタ」な表現であったことを、納得していただけると思います。

プティの作品を踊るフェリがポアントで立った時は、柔らかくて強い甲にたくさんの表情がありました。土着(特定少数)の人間関係の中で生じる、ちょっとした劇性とか会話のリズムとかを感じさせるような、独特のニュアンスを持った脚でした。
そしてこのマクミラン『マノン』。フェリはポーズというか脚だけでもう、いわゆる古典とは質の異なる身体が/身体と音楽との関係が、この作品にはあるんだろうなと想像させてしまうダンサーだと思います。画像:世界バレエフェスティバル パンフレットより)
早々にイタリアチームの優勝を予想した、身近にいる生粋の勝ち負け好き(テニスをしていたら、ラミレスに突然「ナイスプレイ」と褒められたらしい)の気迫のこもった観戦は例外として、私の周りで人気が集中したのはアルゼンチンの放送でした。皆の目的は一つ、客席のマラドーナを観るためです。
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2006年
08月
15日
(火)
01:51

短編 1316 話、大長編 17 話。
藤子不二雄(F氏)が生涯に書き上げたドラえもんのエピソードの数です(藤子不二雄ファンサークル ネオ・ユートピア発行「ドラえもん完全作品リスト」による。「ドラえもん学コロキウム 正典」より孫引き)。
これだけたくさんの話があると、人が生きていく上でぶちあたる日常の細々とした「問題ならざる問題」から、人間が有史以来数々犯した愚行まで、どこかで必ず触れられているため「ドラえもんってこういうテーマは書いてないよね」という言論は、漫画のドラえもんを知れば知るほど成立しないことに気づきます。
トップ画像「平和アンテナ(25)」より
人気アクション番組のヒーロー・必ず悪を滅ぼすムテキマンと、律儀に毎週宇宙怪獣を送り出すヒール・アクマーン。死闘前の両者の煽りに興奮したのび太は、うっかり平和アンテナのスイッチを押してしまう。アンテナから出た平和電波は瞬時にブラウン管を超えドラマを狂わせ、戦いは火ぶたを切られる前に…。勧善懲悪の虚構を絶滅にいたらしめる恐ろしい道具「平和アンテナ」。ナレーションのしらけ具合が絶妙です。この後のオチも、F氏ならではの落語センスが光ります。
プロレスに馴染みのある人なら承知のことですが、勧善懲悪や二項対立の筋書きなんてのはとりあえずの撒き餌のようなもので、こうしたストーリーを伴う身体パフォーマンス本来の驚愕と感動は、そんなただの餌にではなく、まったく別の次元にあります。だからもしも「平和アンテナ」みたいな展開が実際にあったら、それはそれで怒りの抗議が殺到するでしょう。
エピソード前半、「みにくいあらそいをなくして、平和な世の中にするのが、悪いってのか!?」と否定を許さぬのび太は、その実ド派手な燃えるけんかがないか探して、つまらなさそうにほっつき歩きます。やっと見つけたと思ったら、「わがままな乱暴者」ジャイアンに先を越されて仲裁されてしまう。
歴戦でさんざん自分の手を汚してきたジャイアンの力量の前に、手出しできなかったのび太は「あ~あ、がらでもないことしてくれちゃって」。その後抜け目なく一枚噛んで旨い汁を吸おうとするスネ夫も含め、争いごとにおける人間の立ち回りパターンがリアルに表現されています。
一般的な話ですが、ある人が自分にとって大変都合のいい理屈を見つけた、考え出したとします。その理屈を正しいと思い込んで何かやろうとする時、都合の悪い邪魔者を排除することも、その「正しい」理屈を支持する人々にとっては正義になり得ます。
とにかく争いや暴力はダメ、という絶対平和主義でムテキマンを打ち切りにする「平和アンテナ」って、こういう善意の空恐ろしさを描いているんじゃないかと思います。名前がすでにそうとう胡散くさい「平和アンテナ」ですが、平和電波っていうネーミングからして、もうどんぴしゃ。
争いの周辺にはこんな人も必ずいます。「新聞社ごっこセット(未7)」

喜びすぎてタテノリながら走る器用なのび太。ペンは剣よりもやらし