大福帳
 

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2006年 12月 20日 (水) 23:51
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風が吹いて蓮の花のつぼみが覗く

松竹が出しているメールマガジンの中に、「秋の一日、きものを着て歌舞伎座へ」という特集記事の紹介がありました。クリックしてみると、

「今日のファッションは「きもの」だから、どんな高級ブランドの服を着た日より堂々としている自分に気付く」

全身全霊他律的なメッセージが踊っていました。

もしかしたら
今日の演目は「浜松屋見世先」だから、金を払うより堂々とおしかけゆすり、ぶったくりたくなる自分に気付く※

こんな洗脳もありえます。実際観劇後「ブランドブティック」に突入したらしいですが、ドアマンの丁寧な態度を確認するにとどまったようです。

記事を読んで改めて考えてみたのですが、歌舞伎座内での和装は、どちらかといえば迷彩服に近いものではないかと、私は感じています。
たとえば歌舞伎座のどこかから、バリー・ペッパー※似のスナイパーがターゲットを狙う場面を想像してみてください。

歌舞伎座は、季節感を大切にしている場所です。
演目のいくつかも、人間の営みを囲む自然という圧倒的存在の感覚を、鮮明に繊細に伝えようと選ばれているのではないかと思います。
そんな歌舞伎座の場内によく馴染む、きものの色彩と模様。きものをまとえば、カメレオンの保護色レベルの高いカモフラージュ効果が期待できます。

次に記事へ戻って、ポイントとなる言葉を拾ってみましょう。

「きもの姿の女性はひときわ華やかに輝いて」

きものをまとった華やかな身体は、まさに歌舞伎座のハレの空間と、渾然一体になります。また現代における伝統のプレゼンテーションという意識の元、歌舞伎座ときもの姿の人は分かちがたく結びつくはずです。
そこには敵の目をくらます特殊加工を施した、最先端の陸上戦闘服のような機能が「ムード」として発生することでしょう。

そして歌舞伎座が醸しだす、あの気楽さ。
きものを着てずっと過ごしても、帯をしょったデンデン虫の気分にならない─そのように気楽に着こなせる慣れた方であれば、きものは誰にも見つからずこっそり鑑賞したり、ロビーをすばしこく移動したい場合にお勧めの装いといえましょう。

ATTENTION
記事には「長時間座る観劇には、お太鼓に結んだ帯がクッションの役割をして、思う以上に快適なことに気付く」という解説もありました。

しかしゆめゆめ油断はなりません。きものを着て座ると、帯の幅の分、物理的に身体は前に出ます(浅めに腰掛けた状態)。劇場で、「前に身を乗り出してのご鑑賞は、周りの方にご配慮いただけますようお願い申し上げます」などという苦しげなアナウンスを聞いたことがありますが、無意識のまま座ると、体型によってはこの姿勢と同じ状態になってしまう。
シマウマの群れにキリンがいれば目立つように、これではやすやすと発見されがちです。桟敷は敵の盲点を突く意味で有効なのですが、毎回やると手の内が知れてしまいます。

でも心配することはありません。古来「芸は身を助く」と、そして「芸は盗め」とも言われてきました。ここは一つ、ベテランに学ぶとよいでしょう。
仕事できものを着る機会の多い方に尋ねてみたところ、席を頼んだり選べない場合は、心持ち身をかがめた姿勢をとるとのことでした。そのまま上目使いをキープしますと、より低姿勢のまま暗闇に紛れることができます、とのアドバイスです。

※「浜松屋見世先」
河竹黙阿弥作『青砥稿花紅彩画』の一部『弁天娘女男白浪』の一幕。

「清楚な美しい娘に化けた弁天小僧菊之助と、若党四十八に姿を変えた南郷力丸が、百両の金を強請り取ろうとするところまでが、この場の前半(略)。緋鹿の子の小布を用いて、万引きと見せかけるのも菊之助を演じる俳優のしどころといえるでしょう。最大の見せ場は、男と見破られた菊之助が、その正体を顕す後半。(略)黙阿弥の七五調の名台詞は、聞かせどころでもあります。(略)正体を顕した菊之助と力丸の傍若無人な様子、また、花道の引っ込みまで、ふたりの息のあったやりとりも見どころとなります。」新橋演舞場花形歌舞伎 パンフレットより

四月大歌舞伎 夜の部
おなじみ白浪五人男、巡る因果をひも解こう
2月『三人吉三』と対をなすかのように、またも嬉しい黙阿弥の白浪(盗賊)物、『白浪五人男』を通し上演。弁天小僧や勢揃の名台詞、がんどう返しの大仕掛けに加え、通してこそ観られる因果の紐解き。『三人吉三』は、宿命を知り罪を抱えたまま極寒の中果てる悪党3人と、脇の人々の冬日にも似た善行とのコントラストが鮮やかだった。初役玉三郎のお嬢と共に、お坊吉三で圧倒的な歌舞伎の絵画美を見せつけ、滲む諦観が涙を誘った仁左衛門は今月、義賊と名高い駄右衛門親分に。背景も雪から桜へ。勘九郎の弁天らが快・怪盗ぶりを披露する。 (REALTOKYO初出 04年3月31日)

※バリー・ペッパー Barry Pepper
『プライベート・ライアン』では優秀なスナイパーを演じました。『父親たちの星条旗』でも、他の兵士から「彼こそ真の海兵隊員」と、慟哭そして万感の思いを込めて語られる兵士の役に。DREAM WORKSの戦争映画は(またうっかり観たら)、この人が登場しないと、まだ主な人物が出ていないのではと余計なことを考えそうです。表情といい佇まいといい、すばらしい演技でした。
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