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2006年 10月 30日 (月) 02:34
三月の5日間 三月の5日間
岡田 利規 (2005/04)
白水社
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○2006.3 ある研究会で『三月の5日間』戯曲と再演のことを取り上げた。その時のメモ

再演を観る時間が取れなかったのだが、先生方の感想を伺って、すごい実験を成功させたらしいと直感した。チェルフィッチュの次回公演を観るまでは確定的なことはいえないが…

言葉の生成のリズム(音数や拍やテンポなど音節的な意味でのリズムではなく)は速そうだ、無理矢理運動に例えると、バウンドしたボールの上がり端をヒットする感じかなと思った。それと身体表現の生成リズムは違うだろう。多分言葉よりもっと速いはずだ。それらが俳優の身体で、ずれたり合ったりするのではないか。このリズムの混在は面白そうだと思い、ユリイカの小劇場特集を買って見たらば。

岡田自ら「言葉がパフォームされる際のリズムと、しぐさがパフォームされることのリズムとが、並行して身体の中を走ることになるわけです。その拮抗が、スリルを惹起」するのだと書いていて驚く。
追記:9月下旬に再演の映像を観たら、ほぼ予想したとおりだった。

研究会では戦争と台詞の話が中心でリズムの話題は出なかった。
が、記憶に残る発言が一つ。
これ、よくニート演劇っていうけれど、ニートはあんなきつい姿勢とらないですよ。
軽く思いついた言葉とのことだったが、タイトで拍手したくなった。

○研究会の後、戯曲を読んでメモ

・ホームレスの排泄と、嘔吐する女子について

訓練を受けた志願兵でも、現場で想像を超えた光景を目の当たりした場合、激しい拒絶の反応として嘔吐するのは、いわゆる戦争映画によくでてくる。実際に、排便欲求に襲われる兵士もいるらしい。『三月~』で吐く子は、ホームレスの行為にではなく、犬だと思っていたものが人間だったと気づいて嘔吐する。
視覚はすでに現実の対象を捉えたが、認識の修正が追いつかないというか、脳がどうにも処理できない。
(研究会で出た意見→この時、それまでのホテルでの行為と感覚も、彼女は一致したのではないか。)

 ・同じく研究会で出た意見→映画『ひまわり』の出征前の兵士のセックスと、渋谷のラブホテルでセックスし続ける男女について

『ひまわり』でなくても、やくざ映画で何度も観た。この場合の女性を抱く動機は、自分の子孫を残したいという種の猛然とした反応、予期される状況への不安と興奮だとする。それに対し『三月~』の彼らは戦争に対する漠然とした不安みたいなものがあって、しかしどうすることもなくとりあえずセックスする。

現場の兵士とは別物の、何重にもフィルタがかかったゆがんだ状況下で、ただ一瞬身体感覚がシンクロしている。それも渋谷のラブホの5日間で。

戦争について語る立派そうな、祭っぽくも聞こえる言葉は脳に入ってこないし信用もしていない、というリアルな実感が、今あるとする。そのような言葉よりもっと無理だと思っていた「感覚」を起点に、だらーとした男女を出してここまで戦争を暗示的に捉えたのはすごい。

劇中のセックスについては、彼らは戦争に対して何かしたい・何か関わりたいと思うものの、どうすることもできなくて、せめてもの思いで関係を持ってしまうという読み方もあるらしい。でも「関わろう」だなんて、「三月の5日間」を過ごした渋谷の男女は思っていたのだろうか。

そういうことにすると、この劇の人物たちはとたんにリアルでなく、旧来の反戦運動の主観的信念を持つ人に見えてきてしまうのだが。個人的にこの劇は、関われないなあという実感やその状況を描いていると思う。

それから戦争に直結する仕事や産業に従事していて、それで生活している人の言葉や身体はカヤの外のまんま、リアルな状況を過不足なくあぶりだす実験ができるのが、国際的に見て特殊なことだろうと感じた。

○岡田利規講演(昭和文学会 2006.5)のメモ

登場人物AがBのことを語っていく台詞について、ブレヒトの演出をテキストのレベルまで落とし込んだとのこと。
なぜそれをやったのか考えてみた。他人が状況を語ることによって、本人よりも合理的・客観的な言葉がでてきたり、逆にまどろっこしくなる(日常でもよくある)。つまり他人が介在することによって、言葉の生成のリズムが、本人が自分の出来事を語るよりも複雑に変化するのではないか。

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