大福帳
 

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2008年 02月 25日 (月) 08:48
大女優二人が実の娘と共演していますが、他人なのに似ていて驚いたのがグレン・クローズとメリル・ストリープです。1950年代のシーンに登場するクローズは、アメリカの名家の奥様。コンサバティブな装いから毒を含んだ台詞まで、本人よりもキャラクターの記号に目がいきがちな役を楽しげに演じています。ストリープはその娘、といっても母より歳を重ねて現代の場面に登場。怒りや辟易した気持ちではなく、愛情で過去を振り返ることのできる能力で、死の床で深い悔恨の内にある親友を慰めます。二人とも短い出演シーンですが、メリル・ストリープは何役やるのかな!?と一瞬思ったほどの、見事なバトンリレーでした。

evening.jpg
 

物語:死の床にある老婦人アンを、枕元で見守る二人の娘。混濁した意識の中でアンは、娘たちの知らない男性の名前を何度も口にする。"ハリス"という男性と、母はかつて"過ち"を犯したのだという…。意識と無意識の狭間を漂うアンの記憶は、1950年代のある週末の出来事へと遡っていく。ニューヨークで歌手になる夢を持った24歳のアンは、親友ライラの結婚式でブライズメイドをつとめるために、ロードアイランドの海辺の町を訪れ、そこで運命の恋に落ちたのだ。だがその恋には悲劇的な結末が待っていた──。自分たちの知らない母の人生を垣間見た娘たちは、悩み迷いつつも人生の決断をする一歩を踏み出す…。

ちなみに役と実際の親子関係はこうなっています。
ライラ
1メリル・ストリープがライラ(現在・老年期 画像下左)、グレン・クローズがライラの母(50年代・中年期)を演じる。
 他人だがこの映画では似ている
2メリル・ストリープがライラの老年期、メイミー・ガマー(画像上左)はライラの若年期を演じる
 ガマーはストリープの実の娘。そっくり

アン
1ヴァネッサ・レッドグレイヴがアン(現在・老年期 画像下右)、ナターシャ・リチャードソンがアンの長女コンスタンス(現在・中年期)を演じる。
 リチャードソンはレッドグレイヴの実の娘
2ヴァネッサ・レッドグレイヴがアンの老年期、クレア・デインズ(画像上右)はアンの若年期を演じる。
 他人。しかもイギリス人とアメリカ人

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さて老女ライラは、愛情で過去を振り返ることのできる能力をどこから得たのか。死の床にあるアンが50年代を追憶するシーンで、若い女優たちがこれを解き明かしています。結局ライラは、ハリスに捧げた思いが叶えられずに迎えた自分の結婚式で、ずっとそばにいて自分のために歌ってくれた親友アン(クレア・デインズ)に、その能力の原形のようなものを感じ取ったのだと思います。この時「タイム・アフター・タイム」を歌うデインズのジャズ・ヴォーカルが、生き生きとした広い世界を伸びやかに表現していてよかったです。

若きライラ、メイミー・ガマーの演技も繊細でした。たとえば場違いな格好でお宅に来てしまったと言うアンに、そうは思わないと答え、ほんとうに感心したように「いつも人と違うものを見つけるのね」と言う冒頭。アンは服に限らず「人と違うもの」をいろいろ見つけたい人で、この頃はその意欲と良い予感が希望に直結しています。ライラはアンのそういう内面を、敏感に受け取って素直に認めています。
ところでライラには、現実になかなかついていけない弟バディ(ヒュー・ダンシー)がいます。アンはこの姉弟と大学時代の友人で、バディにとってアンは輝かしい学生時代を象徴する存在です。もちろん彼の思い込みなのですが、そういった、のちに悲劇の伏線となる事情や育ちの違いに関係なく、アンとライラが親密な理由は、最初の台詞をライラが言った途端、明るい光が差し込んで来たように理解できました。

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アンのような人が主人公で、彼女とライラだけでなくバディからも熱い視線を送られる男ハリス(パトリック・ウィルソン)が出てくる映画では、当て馬も必ず出てきます。今回はアンの二人の夫がそれです。二人目にいたっては、アンに「髪がすてきだった」と、かなりどうでもいいことしか述懐されません。立体なのに書き割り的な、彼らの容姿や佇まいに注目するのもオツです。監督は前作の『華麗なる恋の舞台で』でも、主人公(舞台女優)の劇中劇の共演者に、もう完璧に書き割りが動いているみたいな、オヒョイ風の芸歴長そうな俳優をちょっと出していました。こういう細部が緻密で面白いです。

原作はアメリカの人気作家スーザン・マイノットの小説です。原作には何十人もの人物が出てくるそうなので、階級社会の上の方の、意地悪かつ面倒くさい関係性に頭をしびれさせながら読んでいくという、映画とは異なる楽しみがあるかもしれません。マイノットと共同で脚本を執筆したのが『めぐりあう時間たち』の原作でピュリッツァー賞を受賞した作家のマイケル・カニンガム。彼をはじめ出演者とスタッフには、アカデミー受賞歴が当たり前のように名前の横に並ぶ人々が集合しています。

50年代のシーンの中心となる、ウィッテンボーン家の格式ある別荘は、映画だとニューイングランド沿岸ロードアイランド州にある設定で、ロケはニューポート(ローズクリフ、トリニティ教会、イーストンビーチ)をはじめいくつかの町で行われています。特に実在の家を使った東海岸の別荘の映像は、安い感じが全然しなくてさすがでした。なんだかもう何かオスカーを取っているような、ノミネートされなくても絶対「ハズレ」の映画じゃない雰囲気が伝わってきます。しいて言えば、そこが少し小粒にも感じられる作品です。

映画の一言
「才能がないと認めるのは大変なことなのよ!」
アンの次女、ニナ(トニー・コレット)の台詞。
何か始めても長続きしない、根無し草生活を姉からなじられて。

作品情報
2/23(土) 日比谷みゆき座ほか全国ロードショー!
©2007 Focus Features
配給:ショウゲート
上映時間:117分
公式HP:http://www.itsunemu.jp/
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